STORY

ストーリー

FBKINGDOM STORY

EP3-1 城下町での新生活

原案:白上 フブキ 執筆:茅埜 仁子

「楽しかったー!」
大勢のすこん部たちに混ざって、地上へと帰ってくる。門から地上への道は若干狭く、ぎゅうぎゅうと押し合いながら階段を登る。
地上が見えるとパッと広場に解放されて、大きく伸びをする。

たくさんのお菓子に、豪華な食事。そして愉快な冥界のすこん部たち。本当に楽しいパーティーだった。
冥界のすこん部たちはみんな個性的で、頭が取れたり目が光ったりと、少しびっくりしたけれど
「また来年も遊ぼうな!」
そう言ってくれた。なんてこともない、でもどこか懐かしいような約束が胸をぽかぽかと温めてくれる。
「来年は僕もいっぱいお菓子を持って、遊びに行きたいな」
楽しく生きる目的はいくらあってもいい。それが素敵な友人との約束ならなおいい。

生きる者、死せる者、両方が大いに楽しみ、大いに笑う。
冥界とFBKINGDOMの盟約のもとに、年に一度の盛大なパーティーは幕を下ろした。

夜も遅く、なんなら若干、空も白んできていた。それを見た瞬間に肌寒さを自覚する。
マントの両襟をぎゅっと引き寄せ身震いをする。
「うぅ、寒っ!」
そうだ、図書館で説明を受ける間もなくハロウィンパーティーに行ったものだから、今日どこに泊まればいいのかわからない!
「もしかして……僕、宿無し……?」
さて困った。この寒さで野宿は辛い。泊まれる場所がないか、誰かに聞くのがいいだろうか。そう思って周りを見回す。しょぼしょぼと目を擦るすこん部の多い中、はたと目の合うすこん部がいた。
「あ、あの!」
勇気を出して声をかける。
彼は一瞬目をぱちくりとさせたが、困り顔の僕を見てすぐに笑顔を作ってくれた。
「どうしたんだ?」
「えっと、僕は今日からこの国に来たんですが……」
かくかくしかじか。一生懸命説明すると、彼は「あぁ」と頷いて僕の肩にポンと手を置いた。
「なるほど、それは心細かっただろ。でも、宿屋もきっとパーティー帰りでお休みしてると思うぜ」
「あ!そうかぁ……」
がっくりと肩を落とす僕に、彼はまぁまぁと肩をなでる。
「だからさ、今日は良ければ俺の家に泊まっていくか?」
「い、いいんですか!?」
「いいよ、いいよ。ちょっと片付いてないのは許してくれよな」
「そんな!本当にありがたいです!」
急に悪いなと思いつつ、差し出された親切を受け取れる嬉しさを噛み締める。深々と頭を下げると、彼は照れくさそうに笑ったのだ。
「じゃあ行くか。コーンスープもあるんだ」
「コーンスープ!?わぁ!」
あの美味しいとうもろこしのスープなんて絶対に美味しい!僕は思わず目を輝かせてしまった。
「コーンスープ、好きなのか?」
「はい!」
しまった。元気よく答えてしまった。さぁっと顔が青ざめる僕を見て、彼は思わずといった様子で吹き出した。
「あ、ごめんなさい。つい……」
「全然、喜んでもらえたようでなにより」
少しおどけた口調でそう言った後、彼は改めて僕に向き直りふわふわの手を差し出した。
「なんだかキミとは仲良くなれそうだ!これからよろしく」
「……うん、よろしく!」
ぎゅっとその手を握り返す。程よい暖かさが伝わって、ほんの少し体も温まったような気がした。少しだけ周囲の音が遠くなる。そのまま自然と僕たち二人は並んで歩き、彼の家へ向かうのだった。

彼の家は住宅地の大きな通りから少し離れた、こじんまりとしながらも生活感と温かみを感じさせるアパートメントにあった。そのアパートには時間による建物の劣化と、玄関や共同部にある新鮮な生活の息吹が同居していた。立てかけられた傘、誰かの自転車、回収するのをさぼってしまった郵便物。
それらを一つ一つ通り過ぎ、階段を登った601号室。そこが彼の部屋だった。
「さぁ、どうぞ」
「お、おじゃまします」
外見と同じくこじんまりとした1DK。彼の部屋全体が、ほんのりと彼の人となりを伝えてくる。玄関には足を拭くためのマットと、深い青の傘。また深い青の大きめのソファーがお部屋の主役になるように、家具とカーテンがライトブラウンと白でそろえられていた。本棚には小説と何かの参考書がテーマをそろえて収められている。けれど、本の大きさは、ちぐはぐだ。キッチンには夕方のうちに食べたのか、食器がシンクに残っていて、鍋がコンロに置かれていた。
「素敵なお部屋だね」
「え……ありがとう」
彼は少し照れくさそうに笑って、それからコンロに火をつけた。
「コーンスープ、温めて食べようぜ!」
「やったぁ!ありがとう!」
しばらくしてコトコトと鍋の外から音がする。彼はスープをころんと丸い木のスープ皿によそい、僕に渡してくれる。
温めなおしてくれたスープは、まったりとしたとうもろこしの甘みを感じて本当に美味しかった。
ほっと一息ついた僕を見て、彼が話しかけてくる。
「今日この国に来て、そのままパーティーか。キミはラッキーだなぁ」
「そうかなぁ。いきなりで少しびっくりしたよ」
「それはそうかもな」
ふふふ、と笑い合う。
「僕はこうして親切な君に会えたこともラッキーだと思うよ」
「嬉しいこと言ってくれるぜ」
彼はまんざらでもなさそうだった。そんな彼を見て、僕はずっとほんのりと思っていたことを聞いてみてもいい気がした。
「君はどうやってこの国に来たの?」
「うーん……俺は……」
「だいたいキミと同じだと思う。記憶喪失ってことはないけどな」
「え、じゃあここに来る前はどこにいたの?」
「うーん……ここよりも空が狭くて、時の流れが早いところ……かな」
彼は遠くを見るように言う。
「今も時々そこへ帰るよ」
「そうなんだ?」
「いろんなことがあるけれど。少し悲しいことも多いけれど。俺にはココもあるから、頑張れるんだ」
「そっか……」
彼の答えは抽象的で、あまりよく分からなかったけれど。
「どっちも大切にできるといいね」
なんとなく、そう思った。
「おう!」
彼の笑顔が僕はとても嬉しかった。

僕は彼に国のことや日々の暮らしのことをあれやこれやと話して聞かせてもらった。図書館だけでなく、大規模な国営ファクトリーや国営カジノなど、バラエティに富んだ国営施設の話。そして、彼の夢の話なんかも。

「俺も中は見たことないんだけど、王国の名産品が作られてるんだってさ」
「あぁ~、あの大きな建物って工場だったんだ」
「たまに商店街でも売られてることがあるぜ」
「え!ほしい!」
「それが早いもの勝ちの限定品もあるから、毎回争奪戦なのさ……」
「とっても人気なんだね……」

「王様が生粋のギャンブラーでな。安全に遊べる場所がほしいってことでカジノが作られた、って話らしい」
「えぇ!ギャンブルはちょっと怖いなぁ」
「大丈夫、ちゃんと上限はあるんだ」
「そうなんだ……。え、なんで知ってるの?」
「そりゃ……アレだよ。風の噂で……」

「俺、いつか王国騎士団に入ってみたいんだ」
「あ!門番をしていた人たちのこと?」
「うん。結構難しい試験があってさ」
「でもこの国はとても平和そうに見えるけど……」
「そうなんだよ、だから普段は門番や街の治安維持が仕事ってわけ」
そこで彼は少し声を潜めて言う。
「でも本当はこの土地に昔からある古代兵器に対抗するための組織で…」
「えぇ!?本当に?」
「おうともさ!かっこいいだろ?」

彼の話には生き生きとした日常が溢れていて、どれもこれも面白かった。
いつまでも彼の話を聞いていたかったけれど、疲れには勝てなかった。温かいスープと楽しい会話で緊張がほぐれた僕たちは、どちらからともなく眠りに落ちていった。

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